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IR カジノ住民訴訟とは何かーその全容を明らかにする(2025年10月)

当会は、「IR カジノ住民訴訟」の第3および第4事件を支援する会です。これまで、IR カジノ住民訴訟には6つの事件が争われてきていますが、工事が開始された現在では「工事の差し止め」を争う局面では無くなり、次の解説のような状況にあります。支援者の皆さま及びカジノ問題や地方自治に関心を寄せる多くの皆さまにぜひご一読いただきたいと思います。

「IR カジノ住民訴訟とは何かーその全容を明らかにする」 井上眞理子

IRカジノ住民訴訟とは何かーその全容を明らかにする
           井上眞理子


A, IRカジノ住民訴訟の6つの事件

 IRカジノ住民訴訟はすべて、大阪市とIR株式会社との土地の賃貸借契約および使用貸借契約(無償で物を借りて後に返還する契約。賃貸借との違いは賃料等の対価を払うかどうか、です)をめぐるものです。
IR株式会社と大阪市とのIR用地の賃貸借関係の特徴は ①賃料を不当に安くする、更にその上で②IR株式会社ができるだけ賃料を払わなくてもよいように取り計らう、という2段構えの出血サービスと言えます。
 IRカジノ住民訴訟は、第1事件から第6事件までが含まれるという大きな訴訟です。第2事件と第5事件は主として①の問題を扱い、私達「夢洲カジノを止める大阪府民の会」の裁判である第3事件、第4事件と第1事件、第6事件は②の問題を取り扱っています(文末の図参照)。6つの事件についてもう少し詳しく説明します。

A-1 6つの事件は、それぞれどのようなものか
 ①第1事件:2022年7月に提訴された初めてのIRカジノ住民訴訟。大阪市とIR株式会社の事業用定期借地権設定契約の差止を求め、また大阪市がIR株式会社のために行なう土地改良事業費用負担の合意締結等の差止を求めました。
②第6事件:同じく第1事件原告団が行った訴訟で、大阪市とIR株式会社が市有地使用貸借契約を締結したことにより、得られるはずだった賃料分の損害が生じたとして、大阪市が大阪市長、大阪港湾局長、IR事業者に損害賠償請求を行うよう求めました。
③第2事件:先に述べた事業用定期借地権設定契約について、その賃料が428円/㎡と著しく安く設定されているという事に焦点をあて、借地権設定契約の差し止めを求める訴訟が、2023年4月提訴されました。賃料が不当な「鑑定評価」に基づいて定められていると、原告側は主張しています。
④第5事件:同じく第2事件原告団が提訴した訴訟で、上記事業用定期借地権設定契約の不当な賃料と適正な賃料との差額分の損害1044億9656万3550円が生じたとして、大阪市に対し現・大阪市長、前大阪市長、現大阪港湾局長、前大阪港湾局長、IR事業者、不動産鑑定業者4社、実際に鑑定に携わった不動産鑑定士17名に対し損害賠償請求を行うよう求めました。

B, 「夢洲カジノを止める大阪府民の会」が提訴した「大阪IR・カジノ土地改良事業差止訴訟」
 (第3・4事件)とはどのようなもの?

1,①大阪市とIR株式会社がIR用地の「市有地使用貸借契約」を結び、市有地をIR株式会社に対しタダで使わせたことに対する損害賠償請求、および②IR用地の土地改良費について大阪市が負担するという合意と支払の差止 を求めて我々は提訴しました(第3事件、第4事件と呼ばれます)。それに対して被告(大阪市長、大阪港湾局長)が反論(「被告ら準備書面19」)、さらにそれに対する我々の反論が「第3事件原告準備書面1」になります(特に準備書面1のうち「Ⅲ、被告主張に対する反論」)。6月17日の裁判では、我々の弁護団の畠田弁護士さんから準備書面1に基づく意見陳述がありました。

2,準備書面1の「Ⅲ、被告主張に対する反論」は「第1、本件対策実施枠組が地方自治法に違反していること」、「第2,市による本件土地課題対策費用の負担の違法性」、「第3、市所有土地の無償使用の違法性」から構成されています。

3,第1では、IR事業においては、大阪市が土地改良事業の費用788億円を負担することが決定されましたが、財政支出を抑制する規律・仕組みが働かないこと、そもそも公金を支出する目的である公共性がIR事業自体に無いこと、が詳細に述べられています。事業のプラス面のみを強調し、強引に推進して失敗した大規模プロジェクトで、大阪IRの先行例として「テクノポート大阪計画」があります。

4,第2では、IR用地の土地課題(液状化、土壌汚染、地中障害物等)対策費用は大阪市が負担すると取り決められていますが、これは違法であることが詳細に述べられています。IR事業以前は、埋立地の売買・賃貸に際しては、土地に液状化等の問題があっても、大阪市は「瑕疵担保責任」「契約不適合責任」(売買[賃貸]に際して、対象物に隠れた瑕疵[欠陥]がある場合、売主が買主に対して負う担保責任)を負わず、IR用地の場合のように自らの費用負担で対策工事を行いませんでした。本件における取扱いは極めて異例で、IR株式会社を特に優遇しています。すなわち「平等原則」に反し、憲法14条1項違反です。
 また土地課題対策工事については費用は大阪市が負担しますが、工事はIR株式会社が行い、「公共工事に準じる」と自ら称しているにもかかわらず、施工業者を選ぶ際は一般競争入札を行わず、随意契約でIR株式会社の少数株主が選定されています。財政支出を抑制する規律・仕組みが働いていません。これは「最少の経費で最大の効果を上げる」ことを要請している地方自治法第2条第14項に違反しています。

5,第3では、IR株式会社が大阪市と「市有財産使用貸借契約」を結び、市有地をタダで使用したことの違法性が詳細に述べられています。裁判以前に我々が行った住民監査請求においても、IR株式会社がなぜタダで使用できたか、賃料を払わなかったのか、一部の監査委員さんが本当に粘り強くシツコク、IR推進局と大阪港湾局に質問してくれ、我々の主張を認めてくれました。
 被告側は「財産条例7条4項1号に拠り、市発注工事や市事業に供するため市の施設を利用させるにあたって無償とする扱いが一般的」と主張していますが、実際は本件工事はIR株式会社が自ら使用するための準備であり、それ以外の目的は無いと準備書面は論破しております。
上記は、準備書面のごく一部の御紹介ですが、大阪府市・IR株式会社には強力なボディ・ブローのように徐々に効いてくるのでは・・と思って居ります。

そして6つの事件、3つの共同訴訟が包囲網を狭めていき、IR事業計画を廃止に追い込むことを目指しましょう!
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第1事件原告団
  第1事件:土地の引渡・登記・土地改良費負担の合意・支払いの差止
  第6事件:使用貸借契約の損害賠償請求
第2事件原告団
   第2事件:土地の引渡・登記の差止
   第5事件:約1000億円の損害賠償請求
第3事件原告団
  第3事件:使用貸借契約の損害賠償請求
  第4事件:土地改良費用負担の合意・支払いの差止

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